2016年7月4日
PUSHIM LIVE TOUR 2016「F」東京公演ライヴレポート&PHOTO公開!
PUSHIM、7月1日東京公演、パーフェクトなパフォーマンスで魅了!
4月16日の埼玉公演を皮切りに、全国12か所を巡るPUSHIM LIVE TOUR 2016“F”が、12公演目となる東京の地へ、ついに到着した。7月1日、Zepp Diver City TOKYO。幅広い年代の女性と親子連れが目立つ、アットホームな椅子席のフロア。ステージ後方に大きく掲げられた“F”の文字以外には何もない、シンプルなセット。1曲目「さすらい者~I’m on your side」から全員総立ちになるが、誰も無理していない。踊る人、揺れる人、聴く人、歌う人。2階席では小さな子供がチョコマカ走っている。みなが自由に、この空間を楽しんでいる。
PUSHIMはいきなり絶好調だ。完璧なスキル、表現力、パワーで、「Light Up Your Fire」のようなメッセージ・チューンも、「A Little Love」のような初々しいラブソングも、「ねむれない夜」のような、せつない恋心に打ち震える曲も、包容力いっぱいに歌いかける。バックを支えるのは、言わずと知れた日本のNo.1レゲエ・バンド、Home Grown。とてつもなくタイトで緻密、それでいて伸びやかなグルーヴに乗せ、PUSHIMが軽やかに踊る。腰をぐっと落とし、生命力みなぎる豊穣のダンス。
中盤のハイライトは、ゲストにAFRAを迎えた「Welcome To My Village」だ。驚異的なスキルのビートボックスを駆使し、アドリブで“ロッキーのテーマ”などを繰り出すサービスぶりに、客席が大いに沸く。そのままシリアスで古典的な曲調の「Da Bulldog」「People In The Shadow」へとつなげる流れもスムーズで、オーディエンスは一気にクラシック・レゲエの世界へと運ばれてゆく。ギターのi-Watchがステージ前方に仁王立ちし、とんでもなくエモいソロを弾きまくる。レゲエ・ミュージックの凄み、深みを力強く感じさせるシーンだ。
PUSHIMとHome Grownとの共作「Do The Reggae」は、レゲエのもう一つの側面、開放的なエロティシズムを存分に発揮する曲で、ベースとのTancoとPUSHIMのきわどいダンスに思わず興奮。リズムをキープしたまま、ワム!やプリンスの曲をひとふし歌って見せたり、アドリブ満載の展開に客席はさらに沸く。そのまま、アルバム『F』のリード曲「Feel It」へ突入し、輝くミラーボールの下でZepp Diver Cityがディスコと化した瞬間は、間違いなくこの日のベスト・ショットだ。PUSHIMはお茶目にヒゲダンスを踊ったり、メンバー全員でかわいい振り付けを決めたり。ユーモアたっぷりの一体感は、PUSHIMのライブに欠かせないものだ。
ここで本日2人目のゲスト、韻シストのベーシスト、Shyoudogがやってくれた。ベースではなくマイクを握り、PUSHIMとデュエットで聴かせた「MATTAKU」は、アルバム『F』の中でも屈指のドラマチックなラブソング。長身、イケメン、渋い低音の魅力をたっぷりと聴かせたあとは、そのままコーラスとして残って「A Place In The Sun」へ。ご存知スティーヴィー・ワンダーの70年代の代表曲は、ポップな曲調の内側に、黒人解放運動というメッセージを潜ませたメッセージ・チューン。明るいレゲエ・ビートに乗って、しかし歌の意味の底をくみ取ってしっかり歌う、PUSHIMの歌声が深く胸に沁みる。
そろそろ終わりの時間が近づいてきた。「Keep Peace Alive」を歌う前に、PUSHIMが長いMCをした。天災や人災が相次ぐ日本のこと。内戦や難民が増え続ける世界のこと。人生には予期できないことが降りかかること。この場で音楽を楽しめる幸せ。思いきり生きること。これからも前に進むこと――。魂こめて歌い上げる「Keep Peace Alive」には、神々しいという言葉がふさわしい。落ち着きなく走り回っていた子供たちも、いつのまにか静かになっている。そしてラスト・チューンは「Family」。アルバム『F』の持ついくつもの意味の中で、最も大切なFの一つ。“私たちはファミリーやと思っています”と、PUSHIMは言った。あたたかい拍手が、波のように押し寄せる。
アンコールは3曲。前作アルバム『It’s a DRAMA』からの「夕陽」に続いて、なつかしい曲を2曲。2006年のヒット・シングル「I pray」は、イントロで大歓声が上がった。そして最後はやはりこの曲、2002年のヒット、PUSHIMいわく“人生で一番歌ってきた曲”である「FOREVER」しかない。興に乗ったPUSHIMが、“一緒に歌いたい人!”と呼びかける。たくさんの手が上がる。PUSHIMの指名で舞台に上がった妙齢の美しい女性が、堂々とワンコーラスを歌いきる。笑顔、歓声、拍手喝采。誰よりもうれしそうなPUSHIMの表情。歌い続けてきたことの意味と、これからも歌い続ける理由。なんて素晴らしいフィナーレだろう。
挨拶を終えても立ち去りがたかったのか、最後に「やつらの足音のバラード」を、アカペラでひとふし。そして投げキッス。終わってみれば、2時間20分の豊かな時間。レゲエという音楽に、人生の喜怒哀楽のすべてを託して歌うPUSHIMにとって、それを受け止めるファンにとって、ライブは非日常の場ではない。やあ、久しぶり、元気やった? 最近、こんなことがあったんやけど。そんな会話を交わしたような、ゆったりとした満足感。親から子へ、恋人から恋人へ。友から友へ。それは確実に伝えられ、その価値は年々増している。この幸せがいつまでも続きますように。FOREVER。
ツアーは、追加公演を7月10日(日)に沖縄で開催する事も決定。その他も多数のイベント出演も決定している。
text by 宮本英夫
Photo by cherry chill will